2017/03/30

「ラオスの赤い月」OVOPコラム 内田正

昨年2016年秋、内田正理事長はOVOPシンポジウムに招かれ

ラオスのビエンチャンへ講演に出かけました

そのシンポジウムで 内田さんが見たラオスの景色とは…、


今回は、OVOPコラムを書いてもらいました。              



●<ラオスの赤い月>●

=世界の人が一番行ってみたい国= 

ラオスは、今世界の旅行者にとって、

最も訪れてみたい国のひとつだという。

10月の終り、突然、「ラオス元留学生協会長ブアソン女史」から

11月26日「一村一品シンポジウム イン ビエンチャン」の

招聘状が舞い込んだ。         

私にとって初訪問であり、以前から強い関心があったので、

ワクワクする気分で承諾の返事を送った。


もう、1年にも前になるが、日本の女子学生が、卒業後は

ラオスで働くからと「一村一品運動」の勉強に来た。


パートナーはラオス人だという。既に、何度もラオスに出かけ、

この国での生活や将来に全く不安どころか、

むしろ自信と希望に満ち溢れていたことを フト思い出した。


とにかく、ラオスに関しては、ほとんど表面的なことしか知らない。

ネットで調べてみると、標記副題のことが目に飛び込んできた。


実際、ラオスの首都ビエンチャンを歩き回ると、欧米人らしい旅行者が

否応なく目立つ。

統計的にはアジアで最も貧しい国に、一体何が彼らをこの国に

駆り立てているのだろうか。


一方、シンポジウムは、ラオスの国内行事とばかり思いこんでいたのが

大きな間違いであった。

アセアン各国が参加する堂々の国際イベント。

しかも、驚くことに主催者は、東京に本部のある

「アスジャ・インターナショナル」 ASJA (Asia Japan Alumni)

この団体の佐藤事務総長によると、アセアンの優秀な人材に、

日本留学の奨学金を給付する事業を

外務省などの支援・協力を得て、永年 続けているとのこと。


卒業して母国に帰った留学生OBを組織化し、奨学金給付事業の

アフターケアの意味合いを含めて、

毎年、数回 各国の留学生OB会の持ち回りでいろいろな「テーマ」を決め

イベントを開催しているのだという。

今回は、そのラオス留学生OBが担当で、

テーマは「ODOP(Dはディストリクト)」

そこで、提唱者である「国際一村一品交流協会」の私が呼ばれた次第である

と、やっと得心した。


アセアン各国政府代表や大学の先生から、それぞれの国の取り組み

状況等が発表される。


そのプレゼンに先立って、私は基調講演で

① 零細農民や家業者などの最大多数者を対象に

② いわば、身の丈に合った副業(アグリサイドビジネス)によって

③ 地域農民や家業者の自立を図ろうという

大分で始まったオリジナルな一村一品運動の核心をお話しした。

熱弁をふるったつもりでいたが、アセアン各国のプレゼンは

欧米流のビジネス論のオンパレード。先ほどの私の話は

もうどこかに吹っ飛んでいた。


貧しい農民を、にわか仕立ての「似非企業家」に仕立てて

どうするのであろうか。

地域農村の活性化の救世主はビジネスだけだと言わんばかりに


大企業顔負けのビジネス論だけが、威勢よく会場に響いた

どこでこれほど大きく間違って「我運動」は伝わったのだろう


自然や心の豊かな人間性の価値を一顧だにせず、ものの豊かさへの執着が

あまりに目を覆い尽くしてしまっている。

人間そのものが科学性・非科学性の両方を併せ持つ存在であるのに、

欧米流の数値・統計至上主義(科学性のみ)に立脚する現在のビジネスでは

早晩破綻が免れないというのに…


ものの豊かさに翻弄され、疲れ果てた欧米人が、「心の豊かさを求め

あるいは見失った自分探し」の旅の最適地と目指したところが

ラオスやアセアン

一方、ものの豊かさを渇望し、ビジネスの競争と欲望渦巻く大海原へ



それこそ小さな木の葉舟で、勇躍漕ぎ出そうとする

ラオスやアセアンの若者たち



その結末を知ってか知らずか、ただ静かに眺めるだけの


「ラオスの赤い月」が妙に憎らしい





国際一村一品協会 理事長  内田正